○紋別市環境基本条例
平成23年3月28日
条例第7号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 環境の保全及び創造に関する基本的施策(第7条―第30条)
第3章 地球環境保全のための施策の推進(第31条・第32条)
第4章 環境審議会(第33条―第37条)
附則
豊饒なオホーツク海を擁し、肥沃な大地と雄大な自然を有している紋別。
市内を流れる渚滑川と藻鼈川は豊かな水をたたえ、コムケ湖は270種に及ぶ野鳥が飛来する。夏、空は高く澄みきったオホーツクブルー、冬、海は北から流れ漂う流氷などオホーツク特有の自然景観が季節の移ろいをさらに鮮明にさせている。ここに暮らす私たちは流氷と大地の恵みを生かしたまちづくりを目指し、自然環境は私たちに大きな恵みを与え続けてくれている。
そして、ここには多くの産業の営みと自然と調和したオホーツクの暮らしがあり、先人たちは、この豊かな自然と共生した日々の生活の中から、活力あふれる産業や誇りうる文化を生み出し、今日の基礎を築いてくれた。
しかしながら、私たちはその中で生産・消費活動を拡大させ、それに伴ってエネルギーや資源の利用、熱の廃棄を増大させてきた。化石燃料などの天然資源の大量使用に起因する地球温暖化など地球環境全体の持続性にかかわる問題となり、私たちの生存の基盤である地球環境が脅かされるまでに至っている。
北半球の凍る海の中でオホーツク海は最も南に位置し、紋別を含むオホーツク海に面する沿岸地域は流氷の南の限界点にあり、その沿岸では年々流氷勢力は減退している。
流氷という環境センサーが地球温暖化への警鐘を鳴らし、これを目の当たりにしている紋別市民は、かけがえのない地球環境を保全し、これを良好な状態で将来の世代に引き継がなければならない。
私たちは、一人ひとりが自らの日常生活や事業活動を見直し、限りある資源やエネルギーを有効に活用することで、環境への負荷を少しでも軽減する自然環境にやさしいライフスタイルを実現しながら、市民、事業者、市が互いに協働し、自然と共生していく循環型社会の実現に努めることを総意とし、ここに、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、良好な環境の保全並びに快適な環境の維持及び創造(以下「環境の保全及び創造」という。)について、基本理念を定め、並びに市民、事業者及び市の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、その施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の市民が健康で文化的な生活を営む上で必要とする良好な環境を確保することを目的とする。
(1) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
(2) 地球環境保全 人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに市民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
(3) 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全及び創造は、市民が健康で文化的な生活を営む上で必要とする良好な環境を確保し、これを将来の世代へ継承していくことを目的として行われなければならない。
2 環境の保全及び創造は、市民、事業者及び市が自らの活動と環境とのかかわりを認識し、科学的な知見の下に環境への十分な配慮を行うことにより、環境への負荷が少なく、持続的に発展することができる社会を構築することを目的として行われなければならない。
3 環境の保全及び創造は、市民、事業者及び市のすべてがそれぞれの責務を自覚し、相互に協力し、及び連携して推進されなければならない。
4 地球環境保全は、人類共通の課題であり、市民、事業者及び市のすべてが自らの問題としてとらえ、それぞれの日常生活及び事業活動において自主的かつ積極的に推進されなければならない。
(市民の責務)
第4条 市民は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、その日常生活において資源及びエネルギーの消費等による環境への負荷の低減に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、市民は、環境の保全及び創造に自ら積極的に努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力しなければならない。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、自らの責任において、公害の防止、廃棄物の適正な処理その他の必要な措置を講ずるとともに、緑化、資源の循環的な利用その他環境への負荷の低減に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、事業者は、その事業活動に関し、環境の保全及び創造に自ら積極的に努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力しなければならない。
(市の責務)
第6条 市は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に関し、地域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施しなければならない。
2 市は、環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定及び実施に当たっては、環境への負荷の低減に努めなければならない。
3 市は、第1項の施策の実施に当たっては、本市を訪れる者に対しても、その協力が得られるように、当該施策の周知に努めなければならない。
第2章 環境の保全及び創造に関する基本的施策
(施策の基本方針)
第7条 市は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項を基本方針として、各種の施策相互の連携を図り、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。
(1) 人の健康の保護及び生活環境の保全並びに自然環境の適正な保全を図るため、大気、水、土壌等を良好な状態に保持すること。
(2) 人と自然とが共生する環境の保全及び創造に資するため、生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存、及び適正な保護管理その他の生物の多様性の確保を図るとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境を地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全すること。
(3) 自然との豊かな触れ合いを確保するとともに、地域の個性を生かした都市景観の形成並びに歴史的文化的遺産の保全及び適正な活用に努め、潤いと安らぎのある快適な環境を創造すること。
(4) 廃棄物の減量及び適正な処理、資源の循環的な利用並びにエネルギーの有効利用により、環境への負荷の少ない循環型社会の構築を図ること。
(5) 地球環境保全に資する施策を積極的に推進すること。
(環境基本計画)
第8条 市長は、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、環境の保全及び創造に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 環境の保全及び創造に関する目標
(2) 環境の保全及び創造に関する施策の基本的事項
(3) 前2号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関し必要な事項
3 市長は、環境基本計画を策定するに当たっては、市民及び事業者の意見を反映することができるように、必要な措置を講じなければならない。
4 市長は、環境基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ、第33条に規定する紋別市環境審議会の意見を聴かなければならない。
5 市長は、環境基本計画を策定したときは、速やかに、これを公表しなければならない。
6 前3項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
(環境の状況等の公表)
第9条 市長は、毎年、環境の状況、環境への負荷の状況及び環境基本計画に基づき実施した施策の状況を公表しなければならない。
(環境影響評価に係る措置)
第10条 市は、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業を行う事業者が、あらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、環境の保全について適正な配慮をすることができるように、必要な措置を講ずるものとする。
(規制の措置)
第11条 市は、公害の原因となる行為及び自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれのある行為に関し、必要な規制の措置を講ずるものとする。
2 前項に定めるもののほか、市は、人の健康又は生活環境に係る環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講ずるように努めるものとする。
(経済的措置)
第12条 市は、市民、事業者又はこれらの者が組織する団体(以下「民間団体」という。)による環境への負荷の低減に資する施設の整備その他の環境の保全及び創造に関する活動を促進するため必要があるときは、適正な助成その他の措置を講ずるものとする。
2 市は、環境への負荷の低減を図るため特に必要があるときは、市民、事業者又は民間団体に適正な経済的負担を求める措置を講ずるものとする。
(環境の保全及び創造に関する施設の整備等)
第13条 市は、廃棄物及び下水の処理施設その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備を図るため、必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、公園、緑地その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
3 市は、身近な自然環境と個性を生かした景観等の確保、歴史的文化的遺産の保全その他の潤いと安らぎのある快適な環境の創造を図るため、必要な措置を講ずるものとする。
(廃棄物の減量等の促進)
第14条 市は、環境への負荷の低減を図るため、市民及び事業者による廃棄物の減量及び適正な処理、資源の循環的な利用及びエネルギーの有効利用が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、環境への負荷の低減を図るため、市の施設の建設及び維持管理その他の事業の実施に当たっては、廃棄物の減量、資源の循環的な利用及びエネルギーの有効利用に努めるものとする。
(海、河川、湖沼等の水質の保全等)
第15条 市は、良好な水環境を保全するため、海、河川、湖沼等の水質の保全、親水性の高い海辺、水辺の保全その他の必要な措置を講ずるものとする。
(流氷の海を守る活動)
第16条 市は、北半球における流氷が来る南限という地域特性とその恵みを十分に認識し、オホーツク海の環境を保全する活動を推進するため必要な措置を講ずるとともに、関係機関等と緊密な連携を図り、広く世界に向けて現況及び活動状況の情報発信に努めるものとする。
2 市は、オホーツク海域における石油掘削及び輸送時における油流出事故等の不測の事態に備え、関係企業及び関係機関との情報交換に努めるとともに、油防除資機材の計画的整備対策に努めるものとする。
(森林及び緑地の保全等)
第17条 市は、人と自然とが共生できる基盤としての緑豊かな環境を確保するため、森林及び緑地の保全、緑化の推進その他の必要な措置を講ずるものとする。
(美観の維持)
第18条 市は、美観の維持及びその意識の高揚を図るため、ごみの散乱の防止その他の必要な措置を講ずるものとする。
(環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進)
第19条 市は、環境への負荷の低減に資する製品等の積極的な利用に努めるとともに、市民及び事業者による当該製品等の利用が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。
(市民等の意見の反映及び参加)
第20条 市は、環境の保全及び創造に関する施策に、市民、事業者及び民間団体の意見を反映することができるように、必要な措置を講ずるとともに、その施策の推進に当たっては、市民、事業者及び民間団体の参加の機会の確保に努めるものとする。この場合において、市は、次代を担う子どもたちの意見の反映及び参加の機会の確保についても配慮するものとする。
(環境教育及び学習の推進)
第21条 市は、市民及び事業者が環境の保全及び創造についての理解を深めるとともに、これらの者の環境の保全及び創造に関する活動を行う意欲が増進されるように、環境の保全及び創造に関する教育及び学習を推進するものとする。
2 市は、特に次代を担う子どもたちの環境の保全及び創造に関する教育及び学習を積極的に推進するものとする。
(市民等の自発的な活動の促進)
第22条 市は、市民、事業者及び民間団体による環境の保全及び創造に関する自発的な活動が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。
(事業者の環境管理の促進)
第23条 市は、事業者がその事業活動に伴う環境への負荷を低減するよう自主的な管理を行うことを促進するため、助言その他の必要な措置を講ずるものとする。
(事業者との協定の締結)
第24条 市長は、事業活動に伴う環境への負荷の低減を図るため特に必要があると認めるときは、事業者との間で環境への負荷の低減に関する協定を締結するものとする。
(情報の収集及び提供)
第25条 市は、市民、事業者及び民間団体の環境の保全及び創造に関する活動に資するため、環境の保全及び創造に関する情報を収集し、これを適切に提供するように努めるものとする。
(調査及び研究の実施)
第26条 市は、環境の保全及び創造に資するため、必要な調査及び研究の実施に努めるものとする。
(監視等の体制の整備)
第27条 市は、環境の状況を的確に把握するため、必要な監視、測定、試験及び検査の体制の整備に努めるものとする。
(国及び他の地方公共団体との協力)
第28条 市は、環境の保全及び創造のための広域的な取組を必要とする施策について、国及び他の地方公共団体と協力して、その推進に努めるものとする。
(施策の推進体制の整備)
第29条 市は、その機関相互の緊密な連携及び施策の調整を図り、環境の保全及び創造に関する施策を推進するための体制を整備するものとする。
2 市は、環境の保全及び創造に関する活動を市民、事業者及び民間団体と共に推進するための体制を整備するように努めるものとする。
(財政上の措置)
第30条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるように努めるものとする。
第3章 地球環境保全のための施策の推進
(地球環境保全に資する施策の推進)
第31条 市は、地球環境保全に資するため、地球温暖化の防止、オゾン層の保護等に関する施策を積極的に推進するものとする。
(地球環境保全に関する国際協力の推進)
第32条 市は、国及び他の地方公共団体、民間団体その他の関係機関等と連携し、地球環境保全に関する国際協力の推進に努めるものとする。
第4章 環境審議会
(設置)
第33条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定に基づき、環境の保全及び創造に関する基本的事項を調査審議するため、市長の附属機関として、紋別市環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(所掌事務)
第34条 審議会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議する。
(1) 環境基本計画に関すること。
(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する基本的事項
2 審議会は、前項に定める事項に関し、市長に答申するとともに、必要があると認めるときは、市長に意見を述べることができる。
(組織)
第35条 審議会は、委員15人以内で組織する。
(委員)
第36条 委員は、規則で定めるところにより、市長が委嘱する。
2 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 委員は、再任されることができる。
(委任)
第37条 この章に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
附則 抄
(施行期日)
1 この条例は、平成23年4月1日から施行する。